未確認歩行物体
東方香霖堂などが好きなケダモノの住処
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きせいちゅう
朝、目が覚めたら虫になっていた――というのは、外の書物の一説だ。
その書物になぞらえるならば、朝、目が覚めたら虫が店の前で行き倒れていた。

……というか、虫の妖怪が、軒先で寝ていただけなのだが。


「うう、私、どうしてこんなところに」
「さてねぇ。僕の方が聞きたいくらいなんだけど」

ここ最近、外は曇天で気温の低い日が続いているから、それが原因ではないか。
そんな推測をしながらも口には出さずに、とりあえずお茶でも振舞ってみる。

「はうっ……暖かい、暖かいよー」
「何だ、暖がとりたかったのかい」

もう使わないだろうと思ってたストーブに火を入れる。燃料は、まだ残っていた。
最初こそ、ぶすぶすと不機嫌な音を立てていたが、やがて部屋を暖める。
肌寒く感じていたので、たまにはいいものだな、などと思っていると

「天国?ここは天国!?」

暖かさに引き寄せられるように、ふらふらと近寄ってくる。
その顔は、温度のせいかだらしなく、ふやけた様な顔だ。

「寒そうだから暖房を入れただけで、大げさな娘だな」
「だって、昆虫って寒さには弱いんだよ?」
「冬眠なんかはしないのかい?そういう妖怪もいるようだけど」

やかんをストーブにかけて、椅子を用意してあげた。
そこに膝を抱えて震える彼女は、こうこう言い返してくる。

「ふっ、私のような妖怪ともなれば冬眠の必要は」
「それじゃ換気のために窓でも開け――」
「ウソです寝床がこの前の大雨で壊れて途方にくれただけです」
「道理で」

納得したので、一応の開店準備をすると黙々と本を読む作業に入る。
虫の妖怪の彼女――リグル・ナイトバグ――は、そのまま寝ているようだった。

しばらくして店がぬくたまると、僕は燃料の節約のため火を落とした。
そしてそのまま再び本を読んでいると、彼女が目を覚ましだす。

「ぅぁ、寝てました?私」
「よだれをふいたほうがいいよ、とは言っておく」
「…………ぅぅ、死にたい」

よく判らないが、何か鬱になったようだ。
とはいえとりあえず会話できるくらい元気になったのは確かなので
何処へでも行ってくれ、と遠まわしに提案してみる。

「また倒れちゃうよ!」
「そんなことを言われてもな」
「お願い。見捨てないで。私をここに置いてください。できれば暖かくなるまで!」

あと、一日に一回くらいは甘いお菓子を食べたいです、などいう要求までしてきたので
僕はその提案を、全力で丁寧に三途の川の向こうあたりまで蹴り飛ばし、却下した。

「出口はあそこだ」
「……死ぬまえに虫を大量に呼んで刺し殺してやる」
「さらっと脅迫するんじゃない。それに仮に置こうにも、誰かを養う余裕なんて無いよ」
「な、なんとかそこを……」

結局、僕は雑用を手伝わせることで冬眠場所を提供することになった。
加えて、虫を操れるらしいので、害虫の類は一切合財追い払ってもらうことにした。

思いのほか彼女は小食なので食費もさしてかかることもない。
つつがなく、とはいかないが、それでも僕とこの店は彼女を受け入れていた。
これで布団にもぐりこんでこなければ、特に文句もない。



「ところで、どうして家の前で倒れてたんだい?」
「何だか凄く気になる匂いに惹かれてきたような記憶が、ぼんやりと……」
「ハエ取り紙に引き寄せられるなよ。妖怪として」

この記事に対するコメント

だめだこのリグルはやくなんとかしないと…。
 
 
今回も楽しく読ませていただきました。
うちは田舎なので害虫が多く、台所に二つ下げたはえとり紙が半月ほどでまっ黒くなるほど、ハエだの羽虫だのがひっついています。虫の多ささえ慣れてしまえば住みやすいところではあるんですが…。
【2008/05/30 00:16】 URL | なかつくにあき #cMcEE0to [ 編集]


ありがとうございます。
上にも書きましたが、リグルはもっと良い子のはずなんです。
気温がわるいのですよ!あと天気。

私の生息地は意外と都会なので、実ははえとり紙には縁がありません。
(動物的本能な意味で)田舎の方が心地よいとは思うのですが、エサも豊富なので中々。
【2008/06/01 00:43】 URL | ぽんこつたぬき #tav.EX6g [ 編集]


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