未確認歩行物体
東方香霖堂などが好きなケダモノの住処
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鈴蘭畑のどこかには
ある日のことです。
鈴蘭畑の中で、小さい命が捨てられた人形に宿りました。
周りには鈴蘭がいくらでも咲いて、その毒を惜しげもなく振りまいています。
そんな鈴蘭畑の中で、彼女は声にならない声をあげて生まれたのです。
赤く、明るく輝く。そんな満月の夜のことでした。


お人形は可愛い女の子で、真っ赤なドレスが何よりも彼女にとって大切に思えました。
この鈴蘭畑で、鈴蘭以外の何かを見つけるのは、とても大変なことでした。
毒に満ちた世界の中で、彼女は彼女以外の何かを、見つけなければなりません。

「私はだあれ?」

鈴蘭は答えず、ただ風に揺られながら、芳しい匂いと、その毒を漂わせるのみです。

お人形の女の子は、今、こうなる前に、何か悲しいことがあったような気がしました。
何か悲しいことがあったので、ただ、どこか遠くに行こうと歩いていた気がしました。

思い出そうとするだけで、自分の中にぽっかりとあいている穴が、どこか痛くなりました。
どこが痛いのかはわかりません。
ただ、その痛みが無くなった時、痛みと一緒に、何かが無くなったのだと。
お人形の女の子には、それが判ったのでした。

「私はだあれ?」

やはり鈴蘭は答えず、その香りと毒を漂わせているだけでした。

お人形の女の子は、やがて完全に一人で動けるようになりました。
彼女が失って、ぽっかりとあいた穴は、鈴蘭畑の毒が満たしてくれました。
もう、どこかが痛かったことは、思い出の中にしかありません。

お人形の女の子は、やがてメディスン・メランコリーと呼ばれるようになりました。
メディスン自身も、他に代わりも無いので、それでいいと思いました。

かつて彼女の、本当の名を知っている女の子がいました。
ですが、その女の子はもう、物言わぬ亡骸となり、土に還っています。
だからもう、本当の彼女はどこにもいません。

そこには、ただ、メディスン・メランコリーがいるだけなのです。

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