未確認歩行物体
東方香霖堂などが好きなケダモノの住処
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揺れる振り子に自覚なし

リクエストで答えてみたシリーズ『紫×霖×幽々子』

「最近、白玉楼によく出向いているそうですわね」
八雲紫がそう言ったのは、穏やかな昼下がりに突然現れてのことだった。
霖之助にとって紫が突然現れるのはいつものことなので、ただ
「そうだよ」
と答える他は無い。
「不思議ですよね。あの子、今まで買い物するなんて滅多に無かったのに」
窓の外を眺めながら話す紫の表情を、霖之助は伺うことが出来ない。
「そうなのか」
とだけ返して、そっと手元のお茶を飲んで、それっきり話すことも無かった。
何の用事かを尋ねようと思った時には、店から八雲紫の存在は店には無い。
そういうものだと霖之助は心得ている。


「近頃はよく、香霖堂に紫が尋ねてくるそうですね」
別の日に、西行寺幽々子がそういったのは、白玉楼の縁側でのことだった。
霖之助にとって、それは別にいつものことなので、ただ
「そうかもしれませんね」
と答えた。
「ご存知ですか?彼女が、自分から誰かに関わるのって、すごく珍しいんですよ」
背を向け、空を見上げながらそう話す幽々子の表情を、霖之助は伺うことなんてできない。
「彼女にとって無視できない道具があるからでしょう」
とだけ返して、霖之助は頼まれていた、どうでもよさそうな道具を妖夢に手渡した。

こんな道具を何に使うのかと、霖之助はお使いに来た妖夢に聞いたこともあった。だが
「何も言わずに、どうか店主殿が届けにきてください」
と言われてしまったので、それ以来、霖之助は深く追求するようなことはしないままだ。


別の日の夕飯時に、八雲紫が香霖堂へ鍋を持って現れた。
普段持ってるものといえばせいぜい傘だと相場が決まっていたので、
これには店主の霖之助も、はてなと首をかしげながら
「その鍋はなんですか」
と尋ねた。
八雲紫はなんでもないように
「使いの者が夕飯を作りすぎてしまったので」
と言ってのけたあげく、せっかくなので味の感想を教えてくれと言ってきた。
霖之助は紫の考えなんて理解できないと思っているので素直に答える。
「ものすごく美味しいです」
あなたはあやしいです、とは口が裂けても言わないのは、さすがだった。

八雲紫は霖之助が全部食べ終わるのを見て満足したようで
にっこり笑って帰っていった。
それは普段の妖しい微笑とはどこか違っていたような気がした霖之助は
その笑顔が可愛いと思いながらも、だからこそ妖しいなとだけ思っていた。


それとは別の日の夕暮れ、白玉楼で霖之助は幽々子に晩御飯をご馳走になっていた。
というのも、いつものように道具を届けた折に、幽々子と食事の話題になった時、
「そういえばこの前に、八雲紫が持ってきたおかずは、驚くような美味しさでした」
などと霖之助が答えたところ、幽々子が
「白玉楼の食事もぜひ味わっていってください」
と言ったからだ。
霖之助が答えたときに、幽々子が着物の袖口を握っていたことを、霖之助は知らない。
ただ霖之助は、無碍に断るのも悪いと思ったので幽々子の提案を受けることにしたのだ。

「よろしければ、こちらのお酒もどうぞ」
幽々子が勧めてくるお酒がたいそう美味しかったので、霖之助は何杯か口にした。
だが美味しい上によく回るお酒だったようで、すっかりと酔いつぶれてしまった。
「あらあら。使いの者に寝床を用意させますので、どうか泊まっていってくださいな」
霖之助は申し訳ない気持ちで一杯だったが、歩けそうに無いのでそのまま一泊した。


それとはさらに別の日、香霖堂で霖之助はうたたねをしていた。
穏やかな日差し、木々を撫で、ここちよい音を奏でて吹いてくるそよ風。
椅子にゆっくりと体を預けながら、霖之助は夢と現の境界をたゆたっていた。
「眼鏡、はずしたほうがいいですよ」
なぜか霖之助は八雲紫に口付けされる夢を見た気がした。
卓上に丁寧に畳まれて置かれた眼鏡をかけながら、変な夢を見たな、とぼんやり考えた。
だけと、たまにはそういう夢もいいなと思った霖之助は、それ以上考えることはなかった。


ある日、香霖堂に現れた八雲紫は、いつもどおり妖しい笑みを浮かべながらこう言った。
「幽々子って、すごくいい子なのよ。だけど寂しがりやなの」
霖之助は、そうだねと頷いた。

ある日、白玉楼で、西行寺幽々子は、いつもどおりぼんやりとしながらこう言った
「紫ってば、ああ見えて意外と純粋で真っ直ぐなところがあるんですよ」
霖之助は、そうなのかもしれないね、と頷いた。


藍や妖夢は、そんな霖之助をこっそり見ては、ただ、ため息ばかりついている。
朴念仁め、と心の中で呪詛を吐きながら、ただ、ため息ばかりが出るのだった。




「はくしょん! ……誰かの噂か?」


おしまい
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