未確認歩行物体
東方香霖堂などが好きなケダモノの住処
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経過観察

「我ながら素晴らしいマジックアイテムが完成したぞ。これで手間が減るというものだ」

森近霖之助は数日前から、意を決して大掛かりなマジックアイテムを作成していた。
度重なるガラスの破損に見舞われた窓。穴の開いた障子に、蝶番が壊れたドア。
その全てに、一見なんでもないように見えて、魔法が刻み込まれていた。

いつもながら見事な作品だと、霖之助には感心させられる。
どうしても昼行灯な印象を持たれがちだが、
魔法の森で男一人、昼行灯で生きていけるほど甘い状況ではない。

そのマジックアイテムの腕を然るべき場所で活かせば一儲けもできように、と思う。
だが自分の存在を気にかけて、決して人里に身を置くような真似はしない。

「後はこの壊れて進入される事を前提とした『二律背反シリーズ』を設置するだけ……」

霖之助は、独り言は独り者の癖のようなものだと自嘲しているが、私はそうは思わない。
口にすることで、この店の空気は生きてくるのだ。だからこその店だと私は信じている。
音の響くことの無い空間は、その色彩を失って、ただ色あせていくだけなのだ。

霖之助が道具をあるべき場所に戻す。
戻ることで、ゆっくりとこの空間に道具が溶け込んでいく。
霖之助に認識されることの無くなった古道具たちは、そうやって時間を終えていく。
ある道具は売られていくだろう。ある道具は彼によって生まれ変わるだろう。
死んだ道具は葬られる。
死ぬこともできなかった道具たちに、それがどれだけの救いであるだろうか。
道具が単なる、物言わぬ物で留まらぬこともある幻想郷で、それは大切なように思えた。


何かが遠くから近づいてきた。魔法使いだ。
あの魔法使いがが、霖之助にまたあれこれとちょっかいを出しに来るのだ。
昔馴染みだからといえ、あまりの無遠慮さに時々唖然とすることがある。
いつぞは扉が開かないからと、蹴りで開けて無理やり進入したこともあった。

「いよっす、こーりん!」

バン、と景気良く開かれる扉。景気がよすぎて取り付けたばかりの扉が外れる。
だがそこで魔法が発動し、扉が元の位置に戻るよう、動いて戻っていった。

「な、なんだこれ?勝手に壊れて勝手に戻ったぞ?」
「ふふん。外の世界から流れてきた自動ドアなる概念を僕なりに模倣してみたんだ」
「やるなこーりん。よーし、んじゃあ試しに魔法で吹き飛ばして――」
「元は単なるドアだから、吹き飛ばしたらさすがに戻らないと思うよ」
「気合が足らないぜ」
「吹き飛ばされたらダメな程度には繊細なんだよ」

今度は巫女が飛んでくる。どうやら何か食料を持ち込んできたらしい。
きっと今日は普段よりも豪華で賑やかな食卓になるに違いない。
霖之助もまんざらではないようだ。霖之助がいいのなら、私はそれでいい。
彼の幸せこそが、私にとっての幸福なのだから。







ああ、自己紹介が遅れた。私の名は香霖堂。
森近霖之助の住まいにして、忘れ去られた道具が辿り着く場所の一つだ。

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