未確認歩行物体
東方香霖堂などが好きなケダモノの住処
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やんでれ ~Ver ゆゆ様~
庭師の娘を助けた縁で、僕はその庭師の仕える主に気に入られたようだ。
主は幽霊で、見た目こそ美しい少女だったがたいそうな力を持った亡霊らしかった。

「こんにちは」
「いらっしゃいませ。おや、今日はいつもと違う帯ですね」
「あら、わかりますか?」

何度か商売で言葉を交わすうちに、気づけば彼女とは度々訪れるような間柄になった。
買い物をするために来ることもあれば、理由無く姿を見せるだけのこともあった。
庭師の娘も度々顔を出していた。以前は使いとしてだが、最近では主の従者としてだ。
最初こそ何度か口を聞くこともあったが、今では喋ることは無い。
思いつめたような表情でじっとこちらを見ていることもあるが、尋ねると口を閉ざす。

「こんばんは」
「おや、どうしました?店は開けていませんが」
「珍しいお酒が手に入ったので、いかがかしら、と思いまして」
「これはどうもありがとうございます」

やはり幽霊というだけあって、昼間に見るよりも夜の方が強く存在を感じる。
庭師の娘の話が確かならば、それは大きな屋敷の主だという。
それほどの者に酌をされては断るに断れまい。

「お味はいかがですか?」
「これほど良いお酒は滅多に飲めませんね。年に一度、あるかないか」
「お気に召していただけて何よりです」

本当に嬉しそうな笑顔を見せる幽霊が何故こんな酒を振舞ったのか皆目検討が付かない。
確かなのは、しなだれかかってくる彼女の冷たさが、酒で火照った体に心地よいことだけだ。
僕はあまりこういうことに聡い方ではないが、それでもここまでされれば意図は読める。

「……私も頂戴いたしますね」
「これは失礼。あまりの美味しさに、飲んでばかりでした」

彼女の杯を探すが、それらしきものは見当たらない。
だが彼女が僕の杯を差し出してきたのを見て、元々そんなものは無いのだと気づいた。
酒を注ぐ。彼女は僕に体を預けたまま、静かにその酒を飲み干した。

その後も静かな宴は続いた。彼女は僕に酒を注ぎ、僕は彼女に酒を注いだ。
次に彼女はどこか韻を踏むような不思議な言葉を、とうとうと詠いながら舞った。
それはまさに幻想と呼ぶに相応しい、僕の生涯見たものにおいて最上の部類に入る舞だった。

「……深く、お慕い申し上げておりました」

その言葉に僕は抗うことが出来なかった。彼女の顔が僕に迫り、距離が零に至る。
僕は目を閉じながら、芳しい桜の香りと彼女の香りを吸い込んで、彼女を受け入れていた。



「三々九度の杯と祝詞。貴方が半人半妖故に半分の式にて縛らせていただきました。
 改めてお慕い申し上げます霖之助さま。共にありましょう。霖之助さま。嗚呼……」
「幽々子さま……」
「妖夢、西行寺家庭師としての貴女に命ずる。彼の亡骸は西行妖に埋めなさい」
「……ご下命、しかと承りました」

「うらめしや……この身が、この力が、恨めしや……恨めし……」

僕は胸の中で泣く彼女をそっと抱きながら、自分だったものが運び出されるのを見送った。
いつまでも、いつまでも見送っていた。

こうして霖之助はゲームオーバーになったとさ、という一つのありかた。
見事に桜が咲いたのを見たら、あっさりと書けました。これも桜の妖しい力でしょうか?
ちなみに三々九度とか祝詞は結婚式のアレです。幽霊が神道に則るのはおかしい、とか
そういう点は、その、目を瞑っていただけると嬉しいな、と思います。
この記事に対するコメント

なんと言えば、説明できるのか自分でも分かりませんが…なんとも言えない切なさが…香霖も抵抗するような気配を見せないのがまた、なんとも。
【2008/04/24 20:33】 URL | namaless #- [ 編集]


ダメだとわかってもどうしようもない、という。
【2008/04/25 01:18】 URL | ぽんこつたぬき #6x2ZnSGE [ 編集]


幸せなBAD END
【2008/05/03 06:20】 URL | 通りすがり #- [ 編集]


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