未確認歩行物体
東方香霖堂などが好きなケダモノの住処
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しにがみがふらっと 2

香霖堂の扉が景気よく蹴破られたのは、鎌を持ち帰ってから半刻ほど過ぎた頃だった。

店主である霖之助は壊れ具合から魔理沙ではないと判断し、ついでにマジックアイテムのアイディアとして、蹴り飛ばすと勝手に開いて、蝶番、錠前、扉本体の破壊を回避。自己再生機能を持つ魔法の扉の作成を行おうと決意した。名前は『二律背反』

「やい泥棒。鎌返せ!返さなきゃ枕元に毎晩立ってやるぞ!」
「いらっしゃいませ。鎌ならあすこに。それから、枕元に立つのは幽霊じゃないのか?」
「関係あるかいっ!ちょっと船の上で眠ってたら下流に流されててビックリ。鎌が無くて二度ビックリだ!この小野塚小町、死神だけど思わず心臓が止まって死ぬかと思ったんだからね!それで距離を操ってみたら何やら届かないから三度ビックリだ!上司にバレたらどうなるかわかったもんじゃない!さあ返せ!やれ返せ!返せ返せ返せっ!」

うるさい、僕はマジックアイテムで頭が一杯なんだ。そう思ったが、目の前の死神の剣幕がかえって妙な冷静さを与えてくれる。霖之助は、小町ががなりたてるのを聞き流しつつ、お茶をゆっくりと啜って一息を付いていた。

「はい、お茶どうぞ」
「こりゃどうも……じゃなくて!鎌!返せっつうの!」
「だから、鎌はあそこに置いてありますから」
「小汚い棒を指差して適当なこというんじゃないよ!さっさと出しな!出さなきゃ三途の川の向こう側までご案内して閻魔様の前でぎゃふんと言わせてやる!ナリはちみっちゃいし可愛いが、滅茶苦茶に怖い!」
「はいはい。まだ怖い閻魔様には会いたく無いので持ってきますからお茶でも飲んでてください」

ずいぶんと焦っているようなので、説明するより現物を渡した方が早いと、鎌を取りに行く。刀身剥き出しで店に置いてはいられまいと気を利かせて布をかぶせておいたのが間違いなのだと、霖之助は己の行いを悔いた。まさに後悔この上ない。

「はい、お探しの品ですよ。今ならオマケで小汚い棒の先端に物騒な刃までついてます」
「ぎゃふん」

ようやく静かになった、と霖之助は思った。一方小町はすっと立ち上がり、自身の体へ器用に鎌を立てかける。肩幅ほどに足を開き、片手を腰に当て、もう片方の手で豪快に湯のみを持って、一気に飲み干した。
微妙にはだけた着衣が色気をかもし出しているが、その振る舞いはどう見ても豪快の一言に尽きる。
もっともそれを眺める霖之助視線はひややかなものであったが。

「…………お茶おかわり。熱いの」
「……三番煎じでも?」
「ハハハ。白湯よりはいいさね」
「茶菓子は生憎とツケという名の強奪にあったばかりで無いから諦めてくれ。他に何かあるかい?死神様の小野塚小町さん?」
「う、うぐぅ……」

小町は非常にいたたまれず、弱った顔をしている。

「ああ死神さまだもの、やはり店で一番高い茶でも出さねば失礼にあたりましたね。いや申し訳ない。後生ですから枕元に立って三途の向こう側の、ちみっちゃくて可愛くて怖い閻魔様の前までつれていってぎゃふんといわせるようなマネはしないでいただきたいところ。ゆくゆくはお世話になるのでそのときは何卒ゝ」

そういいながらお茶を注いで、にっこりと微笑みながら湯飲みを差し出した。
ちくりちくりと嫌味を言う。霖之助のささやかな復讐である。

「うむ、よきにはからえ……なんて……あはは……」
「………」
「……ごめんなさい。すいませんでした」
「フン。まあ理不尽な駆け込みも大概に慣れてるから気にしなくてもいいがね」
「絶対気にしてるだろ……」
「なんということだろう。僕は死神に怒鳴られて気を病み自殺したら閻魔様に怒られるんだろうなぁ……もうだめだ。絶望した。恩人の娘や神社の巫女には強盗をされて死神に殴り込みをかけられる幻想郷に絶望した。そう言った僕の嘆きを、ちみっちゃくて怖くて可愛い閻魔さまならきっと聞いてくれるに違いない。それこそがこの哀れな店主の最後の希望――」
「あっ、あっ、ごめんなさいごめんなさい。悪かった!ホント!」
「まあ今のはホントの様なウソのような真実の混ざった冗談だけどね」
「色々あるんだねアンタも…」

互いに落ち着いて、2人は扉を元の位置に何とか直した。
扉を立て直して鎌を手に取る小町は、それにしても、と首を傾げる。

「どうして力が届かなかったんだろう?」
「力?」
「そうさね。この鎌との距離を縮めようと思ったんだけど、上手いこといかなかったんだ。おかげさまで慌ててスッ飛んできたってわけ」
「この店もそれなりには魔除けはしてあるけど、死神まで追い払えるとは思えないな」
「どんだけメチャクチャな奴が奪ってったんだと思って気合入れたけど、扉はあのザマだろ?」
ばつが悪そうに頭を掻きながら、小町は続けた。
「ってことは鎌だけ封じてるんだと思ったの、さ。ね、何か心当たりあるかい?」

霖之助は答える代わりに、壁に立てかけておいた草薙の剣を鞘から抜き放つ。

「……道理で。まー、細かいことは聞かないけどさ。それ持って歩くと蛇の神様とかがうっさいよ?」
「神が幻想郷にいたとしても、幸いにして縁が無いからね」
「そうさね、神様なんて縁が……って、ここ!ここ!」
小町は自分を指差して抗議すると、霖之助はそれもそうかと納得した。

「忘れて無かったことにしようと思ったんだが」
「馬鹿にしないでおくれ。それじゃ帰るけど――霖之助とやら。その剣を持ってるんなら、そのうち蛇の神とも縁が巡り巡ってくると思うよ」
「ふむ。どうしてそう考える?」



「縁は円だけに、ぐるりと回るのさ」



数日後。

「……と、いうわけで鎌の件は上手く誤魔化しておいたよ」
「上手くダシに使われた気がして仕方が無いんだが。君の上司に同情するよ僕は」
「いいのいいの」
「ところで、とっとと帰ってくれないか。死神にいられちゃ商売あがったりだ」
「気にしないで構わないさね。貧乏神もいるみたいだし」
「何だって!?」
「あはははは嘘だよ嘘。やだやだ、いい年こいて往生際が悪い男なんて」
「君が往生とか使うな!縁起が悪い」

たまにサボリにくる死神の姿が、あったとか。
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【2008/03/07 19:41】 | # [ 編集]

No title
催促したみたいですいませんww

小町かわいいよ小町
【2008/03/09 14:54】 URL | 少女臭 #/pHIRAno [ 編集]

No title
きっかけをもらって逆に書きやすかったです(笑
【2008/03/17 21:54】 URL | ぽんこつたぬき #- [ 編集]


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