未確認歩行物体
東方香霖堂などが好きなケダモノの住処
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夏も近づく…


今年も梅雨の精を追い払ってもらい、その暫く後の話。

今日も今日とて、霖之助は無縁塚に通う日々であった。
本来ならば梅雨が明けるまで無闇に出歩きたくは無いが
こういった雨の続く日には、思いもよらぬ物が流れ着くことを、霖之助は知っていた。

「……あまり来たくは無いが」

小雨が降る中、濁った水流を横目に歩く。
いつも足を運んでいる場所は川になっていた。
少し背の高い草が川の中からわずかに見える事がその証明だ。

境界が曖昧になる。

霖之助は、それこそが、雨の日の無縁塚に外界の物の流れ着きやすくなる理屈だと考えている。
この世の果て。境目の向こう側には、想像も及ばぬ世界が広がっている事は間違いない。
時折流れ着く道具の1つ1つを見た霖之助は、それを確信していた。
以来、外の世界に魅せられてからというもの、無縁塚に度々訪れている。
雨にも負けず、風にも負けず。

そうして普段は歩かない場所を歩きながら、
霖之助は流れ着いている物と蜘蛛の巣を探した。
蜘蛛の巣がある辺りは安全な場所である。
少なくとも無縁塚のあたりは、そういう理屈である。
あまり川に近づくと、鉄砲水などで危ない。
しかし、安全な場所に座しているだけでは何も見つからない。

「何も持たずに帰るのは、さすがに勘弁願いたいが……」

とうとう地形に阻まれて進めない場所まで来てしまい、天を見上げた。
いつも何かが手に入るとは限らない。
頭ではわかっていても、いざ足を運べば何かが手に入るのではないかと
期待してしまう自分を否定する気にはならなかった。

何とか分け入って進んできた、道なき道を引き返す。
名残惜しいので無意識にちらりと振り返った視界に、透明な袋が見えた。
中には色とりどりの棒状の者が、ぎっしりと詰まっているようだ。

「しめた」

霖之助は濡れる事などおかまいなしに川に入ると、それを拾って持ち上げた。
袋はビニールで出来上がってはいたが、隙間から水が入って中身は濡れている。
本来よりも文字通りの水増しで重たくなっている物であったが
その重さに手ごたえを感じられることが嬉しかったのか、口元を歪めながら無縁塚を後にした。

霖之助が戻って最初にやったことは、着替えるよりも先に中身の検分であった。
大して価値の無い道具を適当に脇に避けると、1つ1つを丁寧に並べてゆく。
材質が紙であることは能力など使わずとも看破している。
ふやけた紙がやぶれないよう、丁寧に机や板の上に並べられていった。

「……花火か」

一度湿気っている花火は売り物にはなりにくいだろうと思いながらも
それなりに貴重な物である事は間違いない。
含まれている火薬なども、そう簡単に手に入るものではないし
良い広い物をしたと考えていた。


それから数日が過ぎた。
相変わらず雨の降る日は多かったが、晴れ間もあったので
拾ってきた花火はすっかりと乾いていた。

「なぁ香霖、そろそろやれそうか?」

数日の間に店を訪れた魔理沙が、いつ花火をするのかと急かしてくる。
雨の合間に来店した魔理沙は、ここ最近すっかりと花火にご執心だ。

「花火は逃げないよ。それに、花火をやるとは決まっていない」

花火をあれこれと手にとっては、どんな色の火が出るのか想像しているようで
緑の火がいいだの、白い火は珍しいだのと力説する日々であった。

「やらない?火をつけない花火なんて飛ばない鳥と一緒だぜ」
「世の中には、そういう鳥もいるらしい」
「……この大きさだと、どれ位の花火になるんだろうなぁ」

明らかに聞かなかったふりをしている魔理沙を見て、霖之助はため息をついた。

「……今夜は雨が振らないらしい」

連日、花火花火と言われてはたまったものではないとでも思ったのだろう。
根負けしたよ、と言って、霖之助は花火を承諾したのであった。

「ホントか!じゃあ今夜だな!絶対だぞ!」

ぱぁっと明るくなった魔理沙の喜ぶ様子を見て、霖之助は2つのことを思った。

1つはあそこまで嬉しそうにするなら、花火を花火として楽しむのも良いだろうという事。
もう1つは、花火が入っていた袋が薬屋に売れた事は黙っておいた方が良いと言う事だ。

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まとめ【夏も近づく…】

今年も梅雨の精を追い払ってもらい、その暫く後の話。今日も今日とて、霖之助は無縁塚に通う日々であった まっとめBLOG速報【2012/11/13 14:55】

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