未確認歩行物体
東方香霖堂などが好きなケダモノの住処
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お守り様は蛙様で...06
僕の話にうんざりしたのか、彼女――さとりと言ったか――は暫く黙ったままであった。
地下の中でもさらに地下に降りて、いよいよ目的を達成できると思ったのだが、
どうにも世の中、そう上手くはいかないらしい。間欠泉センターとやらはまだ先だそうだ。
かすかに鼻を突く腐卵臭が、ここが地獄であることを教えてくれる。
「お察しの通り、地獄ですよ。昔の、ですが……ここからは猫にご案内させますので。それでは」
地獄に猫?と周囲を見回してみると、なるほど1匹の黒猫が軽快な足取りで寄ってきた。
「どうもありがとう。よろしく、黒猫さん」
にゃーん、と答える黒猫。実に不吉だが、そんな猫も地獄らしいかと思い、
そのまま猫の進む先を追いかけてゆく。
こちらが人間であることを察してくれてか、道中で明らかに歩けない場所は無かった。
蜃気楼のようにゆらぐ建物が向こう側に見えてくる。距離は判らないが、見えるという事は間違いなく存在しているのだろう。

「ようやく見えてきたな。しかし、水がありそうな気配が無いんだが...」
暑いのではなく、熱い。先ほどから汗が滝のように流れ出て喉が渇く。
僕がこのまま温泉につかったところで、すぐにのぼせてしまう。
「じゃじゃーん。天井をご覧くださーい」
声が聞こえた。意識はまだハッキリしているので幻聴という事は無い。
気がつくと目の前の猫は三つ編みの少女になっていた。

化猫――そう断ずるのは短絡的過ぎると笑われるだろうか?
だが目の前で猫に化けられては、そう言うより適当な表現がない。

「……天井?」
そういえば地下だったな、と改めて思い出す。
何かがキラリと光るので目を凝らすと、天井に何かが流れている。
天の川ならぬ天井の川。時折地面に落ちてきている水もあるようだが
地面を潤している気配は無かった。

「どういう理屈かは知らないけど、あれが流れ落ちる一点があったのさ。
落ちた水が溜まった場所から、地熱で噴出して天井にぶつかって。
あとは行ったり来たりの繰り返しで、間欠泉になったんだよ」

他のところだと地面に落ちる前に蒸発するんだ、アハハ、と陽気に笑うが
こちらとしてはたまったものではない。
逆に言えば、あの間欠泉に行くまでに満足な水が得られないという事だ。
道理で館の主が「水を汲んでいくといいですよ。歩くとなると少し酷です」
と言っていたわけだ。

「ここいらの水は瘴気が混じってたり死体が浮かんでることが多いから
お兄さんにはダメなのかもねー。私も死体の方はダメだけど。
ああでもでも死体を運ぶのが生業だから匂いは平気かな。お兄さんの死体は何だか…」
そんなものか、と半分聞き流して水を飲む。ついでに蛙にも水をかけてやった。
喉が渇いていれば味なんて気にもならない。
蛙は死ぬかもしれないと思ったが、しぶとく生き残っていた。

「で、一風呂浴びたら死んでみない?」
「ああそうかい……はい?」
話を聞き流しすぎた事を僕は後悔していた。
この娘は何を言っているのだろうか。
「ダメ?」
見上げるような形でこちらを見つめてくるが、これでハイと答える人は
自殺願望で満ち溢れた者だろう。
「ダメだ。軽い気持ちで地下に来た事を既に後悔してるところでね。
意地でも源泉に浸かって帰りたいんだよ」
「ちぇ。はい、到着ー」

僕は目の前に現れた建物に心を奪われていた。
上では見た事もないような設備。どこか河童の好みそうな意匠が見て取れる。
だが他にも『外の品』に通じる部分がある。

「……珍しいものを見れるとはね。いくらか報われたよ」
「? 温泉に入る前に暑さでやられちゃった?」

僕は今どんな顔をしているように見えるのだろう。
「いや、大丈夫だよ。行こうか」
いずれにせよ、目的を果たすまであと少しだ。


あけましておめでとうございました。
バタバタも収束したら、ようやく書きたくなってきました…
と言っても誰も気づかない気もしますが。

今年もよろしくお願いします。
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