未確認歩行物体
東方香霖堂などが好きなケダモノの住処
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お守りさまは蛙様で...04
僕は今、商店街を歩いている。
もっと正確に言うならば、かつて商店街だったであろう、瓦礫の通りを。
息を吸うたびに、そのかび臭い空気が僕の肺腑を満たしてくれる。

僕は見えるはずの無い空を見上げて、少なくとも地下で雨の心配は無いかな、と思った。
別に『霧雨の剣』を持ってきているわけでもないし、連れの豆蛙も鳴いている気配は無い。
だが、そんな僕を見透かして笑うかのように、この蛙は鳴き始めたかと思うと、
たちまち面倒くさくなるような小雨が全身をしっとりと濡らしてくれる。

雨宿りに走る気力なんて起こらなかった。いや、迂闊に走ることは足場が許さない。
所々にある瓦礫により、うっかりすると足をとられて転んでしまうだろう。
僕はそうならないためにも濡れている足元を慎重に確かめながら歩かねばならなかった。
とんだ歓迎だ、と吐き捨てるように言いながら歩き続ける。
今更引き返すには進みすぎているし、あの灯りまで行けば一息もつけるだろう。
そう信じて歩き続けると、やがて無数の妖精や精霊の類が飛び交う場所までやって来た。

おつかれ、と言わんばかりにケロリロと鳴くカエルを放り投げてやろうと思ったが
雨で濡れた服に疲れた身体では一挙手一投足も満足にいかない。
それでも八つ当たり気味に前の方にカエル放り投げると、
いつの間にか立っていた人影にカエルが張り付いていた。

「ご挨拶だね。こんな雨の中で歩いてるから見に来たってのに」
「……申し訳ない。疲れた挙句、地下なのに雨に降られたものだから」
「あん?まぁ昨日から天気が悪かったから雨が降るのは当然だね。まぁ明日は晴れるさ」
「明日ハレの日、ケの昨日……か。温泉に入りに来たんですが、後悔してた所ですよ」

雨の中だというのに杯を片手に立ってる女には何の期待もしていなかったが、
カエルの一件は完全に非があるので、素直に謝罪しておいた。
酒の御業もあってか、さほど気にしていない様子なのは救いだ。

「ははぁ、間欠泉の一件かい。普通の人間だったら来ようとも思わないはずさ。
 だけどそれ目当てにやってくるのってのは、勇者なのか……愚か者か……
 はて、こんなやりとりを少し前にやった気がするね」
「? そうかい。僕はしがない商人だね。愚か者と言われると返す言葉も無い」
「正直ってのは良い事さ。気に入った!愉しませてあげるから駄目になるまでついてきなよ!」
「この状況じゃ是非も無い。雨宿りできそうな軒先でいいから教えていただきたいね」

なんだ、意外と話せる相手じゃないか。地下を目指すのが気狂いだと言われたが
中には少なからずマトモな相手もいるらしい。それが判っただけでも儲けものだ。
そう考えていると、カエルが僕の体を懸命によじ登ってきているが無視しておく。

薄暗い道を案内された先にあったのは、粗末ながらも生活が感じられる場所だった。
囲炉裏があり、家具があり、寝床があり、何より屋根と壁があった。

「どうせ今から間欠泉に向かったところで、服が濡れてちゃ台無しさ。
 地霊殿の連中も門を閉ざして出てくることも無いだろう。
 乾くまでは適当に酒でも飲んでやり過ごすに限る。身体も冷えたろう?
 丁度一人で飲んでるのも飽きてきたところさ。さぁ飲め。やれ飲め。あと、脱げ」

ゲコココ、と下世話な笑い声のごとき泣き声が頭上からする。
濡れた上着を脱いで、適当に囲炉裏のそばに広げておいた。

「……恐れ入ります。ところでお名前は」
「ん?山の四天王の一人、星熊勇儀さ。まぁ今となっちゃ地底の住人さね」
「森近霖之助と申します。普段は店を構えてるんで、す、が……」


落ち着いて向かい合うと、灯りに照らされた彼女には鋭い角飾りのようなものがある。
まるで鬼だ。というか、鬼そのものだ。なんということだ。
とはいえ逃げ出そうにも荷物を降ろしたので、今更どうにもできない。
僕はとりあえず、差し出された杯を飲み干して、ご好意に甘えることにした。
いっそ記憶がなくなってしまえば清清しいというものだ。
そんな僕を笑うかのようにさらにカエルが鳴くものだから
僕はカエルも濡れた上着の上に放り投げた。

「そういや少し前の間欠泉騒ぎだけどね――」

相手の話に相槌を打ちながら、肴もないまま酒を飲む。

外では、まだ雨の音がしていた。


つづく

ようやく更新を再開してみた所存。日本語なのに、サボると書けなくなるから恐ろしい。
どうでもいいですが、改めて見返したカエルに抱いたおのれの感想がウザカワイイとはどういうことか。
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