未確認歩行物体
東方香霖堂などが好きなケダモノの住処
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

再利用
何となく深夜のリハビリがてら
森近霖之助と八雲紫……の会話に見えていることを祈らずにはいられません。


空が遠くまで抜けるような青をたたえていた。
寒さというものには残酷さすら感じることがある
だからこそ、どこか寒さそのものが美しさを持っていることもあるのかもしれない。
それは刀の刃に見る美しさにも似ている。
境界線に触れるギリギリのラインに惹かれるのか、それとも恐怖心を勘違いしているのか。
いずれにしても美しい空で、美しい空気だった。
常緑樹を覗けば木の葉は落ち葉となって地面に横たわり、健気に大地へと輪廻していく。

ある冬の日。僕はしまいこんでいた道具の手入れがてら、掃除をしていた。
まるでいつも掃除をしていると錯覚することもあるが、道具が多くてきりが無いだけだ。
結果として最初に掃除した場所は最後の掃除が終わる頃には汚れている有様。
それならば手の届く範囲で少しずつ手入れするような形で掃除するのがいいと僕は思う。
コツはサボらないこと。川の水が流れを止めれば腐るように、物事は大抵そうできている。

「……おっと、こんな小刀もあったかな。“切る”ことはできても“斬る”のには向いてなさそうだね」

道具に語りかけるのは気まぐれのようなものだ。
長い月日を過ぎた結果、ひょっとしたら付喪神になって
僕に恩返しでもしてくれるかもしれないという下心も少しばかりある。

今手に取っている小刀は、確か集落で露天に並べられていた売れ残りだったか。
モノは悪くないのだが一行に売れなくて困っているという商人から割安で買ったのだ。
もっとも買い手など付くことも無く、結果として忘れるような形でしまいこまれていたのだけど。

「あら、使う者の手によってそんなものは幾らでも変わりますよ」

部屋の片隅から聞こえてくる声に顔をあげてみれば、どことなく得体の知れない女性が薄い笑みをたたえて立っている。
八雲紫。この寒さを凌ぐために必要な燃料を、代償と引き換えに持ってきてくれる妖怪。
こういう、いつなんどき現れるか判らない存在というのは、性差なく苦手である。
まして家屋の中でそのようなことをやられては、たまったものではない。

「いらっしゃってましたか」
「ダメですよ、過去形にしては。『いらっしゃいませ』と言ってくれなくては」
「……いらっしゃいませ」
「はい、お邪魔しています」

営業スマイルなるものを作る気はさらさらない。
僕は顔を見て話すことも浮ばなかったので、目の前にある小刀の手入れに集中した。
といっても錆びないように油をひいたりするだけなので、すぐ終わってしまうのだけど。

「何か、切ってみてはいかがですが」

気がつくと隣に立たれるのは、刃物を扱ってる以上勘弁して欲しいところだ。
とはいえ、うっかり手元が狂ったところで、彼女が怪我をするとは思えない。

「そういわれましても」
「……これなどは、いかがですか?」

鞘に収めて袋に包みながらそう返すと、彼女が差し出してきたのは手紙であった。
茶封筒とでも言うべきその中には、何か硬い紙のようなものが一枚入っている。

「これは?」
「年賀状の親戚とでもいうべきでしょうか。昨年に行われた西方の祭りで使われるカードです」
「……ああ、そういう」

手入れしたばかりの小刀を使うまでもないだろうと、僕は、そのものずばりなペーパーナイフで封を切ることにした。
中には彼女の手による達筆な文字で新年を祝う言葉がかかれており、その背景には紅の衣装を着た老人が立っている絵が描いてある。

「そういうわけで、今年もよろしくお願いしますわ」
「……こちらこそ」

同じときは二度と巡ってこないが、変わらないこともあるのだろう。
こういう習慣は幻想郷からも消えていなければいいと、僕は何となく思った。

この記事に対するコメント

この記事に対するコメントの投稿














管理者にだけ表示を許可する


この記事に対するトラックバック
トラックバックURL
http://ponkotsutanuki.blog4.fc2.com/tb.php/170-fbccb64f
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

プロフィール

ぽんこつたぬき

Author:ぽんこつたぬき
春が来たら冬眠から覚める獣。
リンク、転載は許可無しでも可。

小説っぽい何かが読みたい人は
東方タグを押すと楽です。

twitter -> ponkotsutanuki



最近の記事



最近のトラックバック



月別アーカイブ



カテゴリー



ありがたい来客者



ブログ内検索



RSSフィード



素晴らしいリンク先

このブログをリンクに追加する



ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる





上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。