未確認歩行物体
東方香霖堂などが好きなケダモノの住処
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お客様は神様で...(後)
続きです。しかしオンセしたり帰宅時間が12時ごろになると書く時間が少ないですね。
珍しい組み合わせなので、すこしばかり時系列を進めて地霊殿afterということにしました。
コメントでの誤字脱字の指摘や、メールでの励ましありがとうございます。本当に嬉しいです。
友人のプログラマの人と「バグレポートの書き方」について話したときのことをなんとなく思い浮かべたり。


(続き)


そういえばこの前も何やら神が疫神だかが「厄い」とか何とか言ってきて
せっかく手に入れた人形の素体を持っていこうとしたことがあった。
それならいっそ厄だけ持っていってくれれば人形を使いまわせていいんじゃないかと提案したら
『人でなし』だとか『厄を侮っちゃだめ』などとお説教をされてしまったことは僕の中では記憶に新しい。

基本的に神などという存在は巫女とか、そういう専門的な仲介役を通すべきであって
道具屋風情が真っ当に対応しても碌な目に合わないというのは古典を紐解いても明らかで――

「さっきから何をブツブツ一人で言ってるの?ねぇ、この人いつもこんな感じ?」
「だいたい合ってるわね」
「うわっ、いつの間に」

気が付いたら2人とも中に入ってきていた。帰ったんじゃなかったのか。
しかし雰囲気さえ誤魔化されてしまえば、つくづく単なる少女にしか見えない。

「えーと、すいませんが何か御用で?」
「ん、ちょっと興味があったから来ただけ」


冷やかしか……。
そう考えれば、あまり肩肘張って構える必要も無かったというわけだ。
商売を考えればどうかとも思うが、どうせ趣味が色濃く出ている店だ。気にしても仕方ないだろう。

「商売人というよりは趣味人の色が強いね」
「はぁ、まぁそんな感じの人です。案内したし帰りまーす」

今度こそ霊夢は本当に帰っていった。しかし、巫女に帰られては目の前の神をどうすればいいのか。
というか彼女の神社の御神体とは全然違う。たしかに力は強いのだろうが、それにしては何かが足りていない。

「のんきな巫女だなぁ……えーと、名前……霖之助でいいんだっけ」
「はぁ、森近霖之助と名乗っていますが」
「霖之助か。うんうん。いい名前だね。水の気が強いこの店にピッタリだよ」

何やら気に入られたようだが、なんで水の気がいいのか僕にはとんと判らない。
まぁ幻想郷の異変なんていうものは基本的に少女達が解決しているのだから当然ではある。

立ち話もなんだと思ったので、僕が普段使っている椅子に座ってもらい話を聞くことにした。
きまぐれで立ち寄ったにせよ何らかの理由というものはあるはずだ。

「お褒めに預かり光栄ですが、何でここに?」
「いやぁ、ちょっと知り合いが好き勝手にウロウロしてるから自分も好きにしようかと。
 よく考えたら私も神奈子みたいにあれこれ動いてみるのも全然問題ないはずだしね。
 ただ一人で地下に行っても仕方が無いし、結局どうなったんだろうかなぁとか思ってたり。
 気が付いたら、あーうーな感じになっちゃってさ」

……霊夢じゃなくてもいい。だれかこの話を判りやすく通訳してくれる巫女はいないものか。
そんなことを、どこかの誰かに届きますようにと願をかけてみる。
目の前に神はいるし、やる価値はあるだろう。どう見ても救ってはくれなさそうなのだけど。

「そういうわけで、ちょっと地下に行ってみない?」
「よくわかりませんが後ろ向きに検討させてください。というか、さすがに嫌です」
「いや、ちょっと見てきたいんだけど、私だけであんまりウロウロするのもちょっとね」

この段になってようやく話が見えてくる。つまり、彼女は僕に何かをさせたいのだろう。
だが神が動くと騒ぎになるのは必定。だからこそ託宣を受けて動く巫女や神主といった存在がいる。
それを介せない程度には何か私的な事情があるのだろう。

「何か事情はあるんでしょうが、ご覧の通り、しがない道具屋でして……」

だが断る、といえないあたりがこの店に残された最後の社会性のように思える。
地下の騒動の一件は話に聞いているが、そういえば『原因はあの神様だ』と霊夢がぼやいていたか。

「まぁ、地下には大きな屋敷もあるし話せる相手も多いから、気が向いたら行ってみてよ。
 その時にこのお守りを持って行ってくれれば、いくらか助けになるしさ。どう?」

そういって差し出された彼女の手には空豆(そらまめ)くらいの大きさの蛙がいる。
お守りといいながら生きているとは、これいかに。というか面倒を見きれない。

「……ナマモノはちょっと」
「あー、この子だったら水をちょっとかけてあげれば大丈夫だよ。でも凍らせたりしないでね」

目の前の自称神様――たぶん本当なのだろうが――何かを思い出したのか、ちょっと苦笑いしていた。
蛙を凍らせるような真似をあえてするような理由は僕には無い。犯人がいたら是非とも理由を教えて欲しい。

「そんなことできませんよ……というか、ここでは生き物は扱わないんですよ」
「だから個人的な贈り物。行く行かないは別にしてもね」

けこ、と蛙がないて僕にひっついてきた。見た目に反して意外と元気な奴である。
それを見た彼女は満足そうに、うんうんと頷いている。

「……どうなっても知りませんよ。僕は水をあげるくらいしかできません。それ以上はどうしようもない」
「それで十分よ。というか貴方は水の気があるんだから、もう少し近しい者を崇める必要があるわ」
「そんなこといわれても」

と言っても聞く耳持たないようで、名前は無いから好きに付けてあげてだの、また来るだの、
好き勝手なことを言って帰っていった。まぁ神様なんてそんなものなのかもしれない。

けここ、と蛙がなく。『コンゴトモヨロシク』といわんばかりである。

「……そんなことをいわれても」

気が向けば地下を覗きに行くこともあるだろう。
地霊殿。間欠泉。そんなことをぼんやりと浮かべながら僕は何事も無いかのように読書に戻ることにした。

僕の顔を見て蛙が笑ったように見えたが、目の錯覚だろう。
やれやれ、茶がうまい。

いつのまにか缶が消えて、安物のお茶になったが、うまいといったらうまい。

(完。地霊殿編に続...かないと思う)
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