未確認歩行物体
東方香霖堂などが好きなケダモノの住処
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晴れていたのに霧雨が
自称古道具屋である香霖堂。客は来ないが来訪者や侵入者は多い。
おおむね物品を略奪していったり好き勝手に居座ったりしていく。
だが今回は、店主がよく見知った侵入者とは少し異なっていた。

「ちょっと、いいから早く食べ物を出しなさいよ」
「意味がわからない」

強盗である。持ってる剣の力といい、本人の気配といい、常人ではない。
いよいよ道具屋の凋落もここに極まったと店主が嘆いていると
目の前の女性はとんでもない事を言った。

「神社のお茶請け、ここにあるって聞いたわ」
「ああ、霊夢の知り合いか何かで?」

あいにくと草薙の剣までは距離があるし、もし触れたとしても剣と彼女に勝てる未来が見えない。
彼に見えるのは道具の能力が今のところ限界。見えた情報は彼女が天人だと示す。
酷い災難だとしみじみ思う。一体どうしてこのような不運が僕に降りかかるというのか。
先ほどから降りだした霧雨のごとく、しとしと、しとしと。そんなまとわりつくような災難が。

「そうといえばそうね。私は比那名居天子。いつぞの異変は私の仕業よ」
「存じません……が、まぁ、そう仰るのならそうなんでしょう」
「うんもー、あれほど私が頑張ったのに気付かないなんて失礼よ」
「店に強盗に入るのは失礼とは言いませんか」

どうせ持っていかれるのなら嫌味の一つでもいってやろう、菓子は奪っても命までは奪うまい。
そんな心情がありありと見て取れる表情で、店主の森近霖之助はそう言った。

「何よ。巫女には渡して天人たる私には渡せないって言うの?」
「ここは店です。対価なくしてどうして品を渡すことができましょう」
「んじゃ後で持ってくるわ。だから、はい」

手を差し出す天子に対して、霖之助は首を縦には振らなかった。
こうなると意地である。
それはギリギリの分水嶺までは駆け引きをするべしという商売人の性か。
渡せ、渡さない、そんな駆け引きをすること半刻。とうとう痺れを切らしたのは天人であった。

「ああ面倒。じゃあ、対価を支払うから渡しなさいよ」
「ようやく判っていただけたようで何よりです。そうですね、ではその帽子の桃でも頂きましょうか」
「いいわよ、はい……むうー」

キレる寸前なのか、相当に不満なのか、口がアヒルのようになってしまっている。
霖之助とすればは生きた心地がしないが、ここで安易に妥協すればそれはすなわち商売人としての自分が死ぬ。
つまり必死の商談であったわけだが、表情に出さないのは場数の勝利なのだろう。

そのまま帰っていく天人を見送りながら桃をかじる。
彼女曰く味はイマイチだ、と言っていたが決してそんなことはなかった。

「うん、おいしい」

勝利の味を噛み締める店主の顔は清清しい。

そんな日もある。
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