未確認歩行物体
東方香霖堂などが好きなケダモノの住処
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その行動を対価とす
リクエストに
・紫霖
・フラグが立った瞬間、
というのがあったので、まずはそちらから。
キスメの人は少々お待ちください。
続きは[read more]から。




そろそろ山の高い所では雪が降るとか降らないとか、そんな噂も聞こえる頃――

「寒い」

僕は凍えていた。
とはいえ燃料の対価を支払って八雲紫に頼み込む事を考えると、どうも気がひけるのだ。
一度あの暖かさに慣れると、それを振り切るのは難しい。
酒も煙草もたしなむ程度の僕だが、あの暖かさにはどうしても依存してしまう。
寒さにさらされるたびに、逆らいがたい誘惑が襲ってくるのだ。

――からん。

そんな風にして寒さで凍えていたら、こんな時に限って客が来た。
「ごきげんよう。最近は冷えますわね」
……訂正したくなった。客の方がマシだったのかもしれない。
「正面から来るとは珍しい。そろそろ冬眠の時期じゃないのですか?」
ちょうど思い浮かべていた相手である、八雲紫がやってきたのだ。
それも普段はいつの間にか室内にいるのに、今日は真正面からやってきたのだ。

「そろそろ燃料がご入用かと思いまして」
紫は室内なのに傘を広げたまま、そういってこちらを見た。
何もかもを見通すような視線が、僕を通過していく。
こうなると下手に隠すより、正直に言った方がいいだろう。
「お察しのとおりですが、良さそうな対価が思い浮かばないもので」

そう、寒くてろくに出歩かなくなった上に収穫は終わりつつある今、
僕が提供できるものは、さしあたって手放したくない品の類しか残ってないのだ。
まだ手をつけていない品は棚へ無造作に積まれている。
それを今から吟味して差し出すのは、さすがに店としてどうかと思ってしまう。

「この二つ折りは……新しいですわ」

――なんて僕が悩んでいる間に、その無造作な棚に紫は手を伸ばしていた。
彼女の行動を僕がどうにかできる余地は残されていないが、それでも言わずにはいられない。
そこは危ない。適当に詰め込んだから、僕以外がうかつに触れると崩れるよ、と。

「あら」

冷静に考えれば、彼女ほどの大妖怪が避けられないはずがない。
だがここは僕の店で、彼女は取引相手である以上は、見ているだけという訳にもいかなかった。

飛び上がるような勢いで彼女を庇うように前に立った。
落ちてくる道具を身に受けながら、身長差で目線の高さにある傘を見て、
ああ、なるほど。だから彼女は傘をさしているのだろう、などと感心していたら、
重たい道具の角がしたたかに頭へぶつかったらしく、目から星がこぼれた。

「ッつう……だ、大丈夫ですか?」
「……お陰さまで無事ですわ。ええ。」

さっきの見透かすような瞳はどこへやら。きょとんとこちらを見つめる彼女がいる。
不意に傘を閉じたかと思うと、彼女の手には白い布が握られていた。
「頭というのは、血の巡りが他よりも多いそうですわ」
「はぁ、そうなんですか」
だからどうしたのだと思い呆然としていると、彼女の布が僕の側頭部へ当てられた。
そこで初めて、自分が血を流していることに気がついたのだ。

「こうしておけば血は止まりますわ」
「申し訳ない。もう少し早く言えば……」
「どうぞ気にせず。今日の所は失礼いたします」

いきなり帰ろうとする八雲紫。いきなり目の前から消えかねない彼女に伝えるべき用件を、
帰られる前に何とか思い出すことができたのは、幸運だった。

「すまない、燃料についてなんだが……」
「もう、入ってますわ。それでは、また」

いつのまに、とストーブを見ると、そこには燃料が入っていた。
昨年とは違い、部屋をほんのりと暖める程度の炎が既に燃え上がっている。
だが、僕がここまでしてくれた礼を告げようとした時、彼女は既にいなかった。

「……これは返さなくてはならないのだろうか」
その白い布が質の良い布であることは肌触りで良くわかる。
ぬくたまる部屋の中で、僕はこれをどうするべきか、ゆっくり考えることにした。
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