未確認歩行物体
東方香霖堂などが好きなケダモノの住処
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最近の行動
東方とは関係のない文章を書いていました。
TRPGのリプレイを小説化しようとした冒頭部分のみ、みたいな文章です。
レポート用紙に3ページ分の分量ですが、なかなかうまくいきませんでした。

一応生きてますよ、というのも兼ねて更新しておきます。
追記に書いた文がありますので、お暇な方はどうぞ。
その現場は夜だったが、男の視界は昼間と同じくらい透明で輝かしく映っていた。
かつて夜は誰もが穏やかな眠りにその身をゆだねる時代だった。
誰もが夜を恐れ、夜を敬い、夜の静寂に死の影を感じていた。
また、男は純粋だった。美味な食を求めず、女を求めず、睡眠を勿体無いと感じていた。
男はただ戦い、相手を倒すということだけに対して欲求を感じていた。

男は狼男と呼ばれる存在であった。ウェアウルフ。ヴェアヴォルフ。ライカンスロープ。リュカントロポス。
多くの土地で、多くの呼び名で呼ばれ、西方では忌み嫌われている種族の末裔であった。

この種族の由来はどこか。
この幻想の話に語り伝えられる起源を遡れば、それは旧約聖書、あるいは神話の時代まで遡ることができる。
そんな歴史ある種族の末裔である男は、現在、東方の果ての島国で存分な生を謳歌していた。
多くの伝説は伝説のままで過ごしている人々が多い世界の裏側で、男は非日常を日常としながら
ただ純粋に戦うことを生きがいに、戦いを日常としていた。
人を殺せば血と金が、吸血鬼を倒せば力と名誉が、幽霊を倒せば正気と理性が、
そして狼男をたおせば、そのいずれかが手元に残る。
男は戦いによって全てをまかない、戦いで全てを築いていた。
それはテクノロジーと民主主義が花開き、安定を保つ平和な時代。
そんな時代にあっても、男の日常たる非日常は使う武器が増えた程度であり、
テクノロジーがもたらした恩恵に混ざりながら、いまだに『まじない』の類が幅を利かせている不思議な世界であった。
 『そんなことがあるはずがないだろう』
 『そんなことはままならないだろう』
 『そんなことはあってはならないだろう』
そういった常識という結界に保護されている世界を、愛おしく大切にせんとする連中によって男には戦いの場が用意されていた。
それはあたかも、行き場を見失った夜に飛ぶ羽虫が蛍光灯に引き寄せられるが如く。

 かくて、男は非日常のフィールドに今日も立っていたのだ。



「こいつで『あがり』だ」

男の放った蹴りが対象の急所にえぐりこまれ、乾いた風と一緒に路傍へと転がっていった。
対象-―巨大な昆虫のような生き物――は声にならない声をあげて、チリひとつ残さずにこの世界から『無かったこと』にされていった。
この世界で二足歩行が許されるのは一部のレッサーパンダや車メーカーのロボットといった例外を除けば、人間と、それに似ている連中以外を認めてやるわけにはいかないのだ。

「お疲れさま」
男が仕事を追えたのを見計らうかのように、男を雇用している組織が随伴させてくれたサポート要員が申しわけない応急措置をとってくれる。
処置の時の痛みで男の口から呻き声が漏れる程度には、男も傷を負っていた。
最後の蹴りが入ってなければ、男は今頃病院送りであっただろう。
もっとも、人間ではない男を見てくれるような病院があったら、の話ではあったが。
「もっと優しくできないのか?」
患者というよりは壊れた工業機械を扱うような手つきで黙々と作業を続けるサポート要員へ、
男はこぼすように言った。 男も無傷では済まないような戦いばかりなので、こうやってサポートして適切な処置をとってくれるメンバーがいなくては、やっていけない。
「現代医学でも、獣医学でも、この処置が限界ね」
「そんな学問なんぞ、クソらえだ……いってぇ」
 口ではそういっているが、受けた傷は応急処置も手伝って、目に見えてわかる形で回復していた。自己再生能力もまた、男の持つ能力の一つである。だが、この強力な再生能力には相応の代償もあった。

―――――ぐるう。

 別に狼の本能が男を唸らせたわけではなく、男の腹が空腹を訴えているのだ。
「いかん、腹が減った」
 無から有を生み出すことができない、ということは常識よりもはるかに強い『原則』となってこの世界に作用している。彼の空腹は、再生の代償としてエネルギーを求める彼自身の衝動であった。
「お食事はご自由にどうぞ。焼肉でも寿司でも」
「もちろん経費で落ちるよな?」
「……現代医療と違って美味しく食べられますので、自腹で好きなだけ食べてはいかがでしょうか?私は報告書を書かなければならないので、本当に、まことに残念ながらお先に帰らなければいけません。労働で得た対価で自腹を切り、心おきなく――」
「わかった、悪かった!」
 にべもない対応をして帰ろうとするサポート要員に男は降参した。世界がどうとか、そういう妄言の類とされる世界に生きている男がおかれている状況というのは、つまるところ世の中にいるサラリーマンと何らかわりの無い、生活のために束縛されるのもやむなし、というものであった。

―――所変わって、焼肉屋。

「いやー、蘇るね。マジに」
目の前に数人前、と表現するのが適切な量の肉が盛られていた皿が、空になって重ねられていた。もっとも、それを黙々と食べているのは一人の男であり、一緒に来た女性が食べたのはごくごく一部に過ぎない。
「自重という単語を覚えた方がよろしいかと」
「ほっとけ」
サポート要員の方が一切れの肉を食べる間に、男は巨大なステーキを平らげた。男の欲するエネルギーは肉で言うならそれくらいに大きい熱量だった。
店を出るとき、彼女はレジで見た忘年会かプロジェクトの打ち上げでもしたのかと言いたくなるような清算金額に眩暈を覚える。組織の金とはいえ、食費の名目で計上しても監査は通りそうにない金額だ。

「……はぁ、食った食った。幸せだね俺は」
「大変結構なことです」
移動用バンの運転席で領収書を報告書にホチキス止めしながら、そうサポート要員は答える。男は飢えから解放され、戦いを終え、完全にクールな状態になっていた。

「仕事の話をしよう」

 そう男が切り出すと、サポート要員は複数の男女が記載されたリストを男に差し出した。その書類に記載された面々には何の共通項も見受けることはできない。教師がいて、犯罪者がいて、小学生がいて、定年間際の男性がいた。
「連中の候補、随分と絞り込めたな」
「ええ。補足すれば、貴方が明日から戦う連中を倒せば、より詳細なデータを手に入れることができます」
「なるほどね……わお、このガキもか?こんな年から吸血嗜好とは恐れ入る。人生をこじらせたな」
 男は笑った。今は眠りをむさぼり、明日になれば戦い、傷を癒すために食い、傷を癒すために眠り、また戦う日々が訪れるのだ。戦いがあれば男は幸せだ。戦いなくして男の人生に幸福や充足といった言葉はありえないだろう。ナチュラルハイと形容されるくらいには、男の人生は明るく輝いている。
 サポート要員が持つファイルには、こう記載されている。

――以上のことから対象は、戦闘に起因する脳内物質の影響により、現代医学で分類するならば多幸症とでも形容すべき状態を維持している。これが本人の意思によるものなのかどうかは、要経過観察。

非日常に住むな狼男にとって、この狂った世界は祝福で満ちているのだ。
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