未確認歩行物体
東方香霖堂などが好きなケダモノの住処
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月待ち
月を見ていた。月を見ていたんだと、思う。
普段からそれほど自分の行動なんて意識してなかったので、
そのあたりは酷く曖昧なものであった。
だから店にある女性が入ってきたときも、僕は何となく彼女の服を見ていた。
正確には、服に描かれていた、月を。

「……さっきから私の服を見てるけど、そんなに気になるかしら?」
「まぁね」と答えると、彼女はそっけなく「そう」とだけ返事をした。

ここは古道具屋で、彼女はお客で、彼女はその日、何も買わずに帰っていった。
この店で何も買わずに出入りする客は、珍しくない。
そもそも客が訪れることが珍しいのだから、それもまた仕方が無い。
仕方が無いのだ。そういう場所に立てた店なのだから。

また暫く日数が経過して、彼女は店の中を見て回った。
彼女の見て回る順は決まっている。右回りに、高いところから低いところへ。
一つの品物を見るのにかかる時間は決まって3秒。手には取らない。
最後に入り口に立って、上から下までじっくり10秒。それから一言。
「また来るわ」
まいどあり、をいう暇もない。今日もまた、彼女は帰っていった。

僕は彼女が来ている間は彼女の月を見て、それから暫くは外の月を見ることにしている。
いつ決めたのかはよく覚えていないが、そのほうが上手くいく気がするからだ。


そういうやりとりが何度か続いたある日、僕は彼女の服から月が消えている事に気づいた。
「月が、無いね」
僕が問いかけると、彼女は僕の前に立ってこう言ってきた。
「探してみる?」
僕は答えずに彼女の服を見た。袖から襟、裾まで。だが見つからない。
「脱がせてみたらあるかもしれないわよ」
彼女はそういってきたが、流石にそこまでやるつもりにはならない。
別に、そこまで月に執着する理由はなかったからだ。
だがここでそのまま引き下がるのも悔しいので、僕は立ち上がり、窓から空を見た。

「やめておこう。この通り、本物が空にあるからね」
空を見上げると月は無い。その夜は新月だったのだろうか?
「探せば見つかるかもしれないわ。私の服と、広い空……どっちが先かは知らないけど」


結局次の朝、彼女は何も買わずに帰っていった。
朝の空に見える月も、また悪くない。
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