未確認歩行物体
東方香霖堂などが好きなケダモノの住処
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専門外


今日も今日とて店を開ける。
明かりが中に入り込むと、雑然とした店内を浮かび上がらせる。
外の世界から流れ込んだ道具が所在なさげに店の随所に点在していた。
幻想卿の人間には用途も使い方もよくわからない。
店主には用途はわかるが、使い方はわからない。そんな道具たちだ。
それらは今日も幻想の時間の中にある。

道具たちは幻想の時間の中にあるとはいえ、ざっくりと割り切れば今の時間帯は朝だ。
道具はそこにあるだけでかまわないが、店主に目を移せばそうはいかない。
そういうわけで朝飯もそこそこに、一応の回転準備に取り掛かったわけなのだが――

「おはよう」

木戸を開けてみると店の前で待っていたのか、少女が店主へ明るい声で挨拶をしてきた。
声をかけられた店主…森近霖之助は、ぽかんと口を開けてその声の主を見つめている。
少女の名は河城にとり。種族は妖怪、もっと細かく言えば河に住む河童で、エンジニアだ。

「あ、ああ。だがいつも通りだ。早くもないよ」
「知ってるよ。挨拶さ」

霖之助はにとりにぎこちない返事を返すと、何事もなかったかのように準備を続けた。
とはいえ木戸を開いてしまえば、あとは暇つぶし用の本と帳簿を持ってきて完了なのだが。

「……いらっしゃいませ」
「そういわれる前から、目の前に私はいるじゃないか」

笑いながらそういいながら店の中の品をあれこれ見て回るにとり。
その興味の対象はからくりというか、工業品であることが多かった。
霖之助は名前はわかるが使い道はわからない。にとりは分解して構造を解析する。
互いに助け合えば互いのためになる、ということで彼女は最近香霖堂によく訪れていた。


こうなった経緯は、そもそもが妖怪の山に出来たという神社へ出向こうとしたことにある。
途中で何やら視線を感じるので周囲を見回すと『光学迷彩。用途:姿を隠す』と出た霖之助。

「こんな素晴らしい道具が世の中にはあるのか。驚いた」

などと暢気に感心して褒め称えたものだから、着ていた河童のにとりも気をよくしたのだ。
互いに害意が無いどころか好意から会話を始めれば、打ち解けるのも容易い。
霖之助が半分妖怪で魔理沙の知り合いであったことも手伝って、今ではにとりも常連である。

にとりはエンジニア故に、外の世界の技術には大きな興味を示した。
もちろん理解できない道具も多かったが、理解した機構はにとりの開発に役立った。
霖之助はにとりに道具を売りつける、という形で材料や技術を提供したし
用途と名前がわかる、という霖之助本来の力がにとりの構造解析の最初の一歩を支えていた。

「――というわけで、これは蒸気の力を利用した高度な機関を簡略化した玩具じゃないかな」
「なるほど、そう考えれば合点が行く。つまり力を蓄えるのではなく、この部分こそが……」
「その解釈は……」
「……しかし、これが捨てられていたとなると既にこの技術は……」

そこから突拍子も無い政治経済まで話を飛躍させていくのが霖之助で、
あくまでも、そこから何が作れるか、という技術を追求していくのがにとりであった。


だが、ある時からにとりは物憂げになっていった。
霖之助が聞くと、どうやら1人でなにか作ろうと思ったらしいが上手くいかなかった様だった。

「なんだろうね。楽しいんだけど物足りないというか」
「外の技術に触れすぎて整理がつかない可能性は?」
「どうかね。そうかも?」

霖之助は彼女を純粋に気の毒で、何とかしてあげたい思った。
なまじ近かった存在であるが故に、その苦しみを僅かながら理解したからだ。

「少し出かけてみるとか、そういうのはどうだい」
「一緒に行く?」
「歩いていける場所ならね」

にとりは笑った。笑ってからしばらくして、自分が笑っていることに気がついた。

それから2人で色々なところを2、3箇所出歩いているうちに、すっかり
歯車が上手くかみ合った様で、他愛も無い会話をできる程に本調子へと戻っていった。

「うん。帰ってもう1回、作りたいものを作ってみるよ」
「それは良い。出来たら見せてくれ」
「でも不思議だねぇ?喋っただけで、こうも楽になるなんて」

霖之助は冗談交じりにこう言った。
「自分の心をを分解してみたらどうだい?案外、その理由がわかるかもしれないよ」
にとりはそれから霖之助に聞こえないように「――何となく、判ってる」と言った。
霖之助が『何か言ったかい?』と尋ねるが、にとりは答えず走り出した。

そして少しは距離をとると、振り返ってとびきりの笑顔でこう言ったのだ。

「心は専門外!」

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