未確認歩行物体
東方香霖堂などが好きなケダモノの住処
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柴のいた日々
某スレッドで話題になり、チェねずみさんの絵の影響で書いた柴のお話。
パロディとオリジナル色が強いので東方カテゴリではなくネタカテゴリを新設し分離しました。







それは中途半端な暑さで、森を抜ける風が冷たい日のことだった。

「こんにちは」

風に吹かれて冷え切った所に、仕入れた道具を確認するためか
八雲紫がひやかしに現れた。

適当につかみ所のない話をして隙間に沈んでいき
気がついたら店の中は、仕入れた品の陳列の果て。
物盗りにあったか、獣が暴れたか、嵐か宴の後のよう。

そんな状況で、どこぞで見かけた帽子を被ったのが座敷に鎮座していたので

「――わん」

放り出すと後が怖いこともあり、結局、その犬を屋敷に置くことにした。





「おっす、こーり……犬?」
「ああ。柴犬のようだね」

翌日、犬を座敷や店に置いて粗相をされては叶わないと、店の前に繋いでおいた。
犬の体を洗うついでに、帽子も洗って乾しておいたのだが、気付けば犬は帽子を被っていた。
さすが八雲紫の隙間から出たと思われる犬だ、と感心したくなるほどに妖しく、そして賢い。

「なぁこーりん、この帽子って……」
「……持ち主が飼い主だとは思うんだが、何せ次にいつ来るのか判らない」
「で、置いておくのか」
「野に放つわけにもいくまいよ。それに…」

優秀な犬のようで、しつけはもちろん、芸もやってのける。
無駄に吠えるわけでもなく、何か邪魔をするわけでもない。
というか、新聞を咥えて持ってきてくれるので、むしろありがたい。

「それに?」
「優秀だ。それに可愛いとは思わないか?」
「……まあ、な」

複雑というか、微妙な表情をする魔理沙だが、僕の評価に反論は無かった。
昨夜仕入れた品の中で価値のありそうなのを吟味していた僕に
何者かの来訪を鳴き声で告げてくれたのは、ほかならぬこの柴犬なのだ。

「こいつ、名前は何ていうんだ?」
「さあ?飼い主じゃないんだから判らないね」
「八雲なにがし、とかいう名前の犬……何か強そうだぜ」
「飼い主が八雲紫ならそうなるね。しかし…柴犬でこれだ。いつかは優秀な式になるのだろう…」

よしよし、と頭を撫でる。犬は心地よさそうにされるがままであった。
最初はどうしたものかと扱いに困っていた魔理沙も、じきに慣れたようで
どうやら今日の関心は、店の品ではなく、この柴犬の方に向いたらしい。

「……おお、そうだ。いいこと思いついたぜこーりん」
「どうしたんだい?」

いい感じに犬と遊んで、毛と埃を服に付着させた魔理沙が店に入ってきた。

「こいつの名前、何か決めておこうぜ」
「ふむ……この柴犬の、か……八雲柴なんてどうだい」
「その心は?」
「飼い主と漢字が似ている」
「ぶははは」
「わんわん」
「おお、返事をしたぞ八雲柴。柴だって。あは、あははは。帽子が反則だぜ。ぎゃはははは」
「笑いすぎじゃないか……ふふふ」

いたく名前が気に入ったようで、魔理沙はしばらく笑い転げていた。
飼い主であろう八雲紫には悪いが、自分でもシャレとしては良い思う。



やがて何日かが過ぎていくと、僕にとって柴がいることが日常となった。
初めは緊張感とでもいうべき何かがあって、色々と気を使うこともあったが
今となっては程よい距離感の中で、互いが互いを助け合って生きていた。
朝は柴が起してくれる。柴と一緒にご飯を食べ、柴と一緒に一日を過ごす。
時折やってくる客の応対も、柴と僕の二人でした。
柴と一緒にいることで僕は僕に無いものを補うことができる。
柴は僕にとって、かけがえの無いものになりつつあった。

「ああ、今日も終わっていく……綺麗な夕日だね、柴。昼と夜の境界だよ」

僕が頭を撫でると、柴は僕に、そっと寄り添ってくれた。



「――こんにちは」

そんな日々もとうとう、八雲紫の出現により終わりを告げた。
わかっていたことだ、と僕は自分に言い聞かせ『飼い主は貴方か』と紫に尋ねた。

「え?え、ええ。まあ」

僕は頷いてそっと柴を抱擁し、名残を惜しみながら撫でた。

「寂しくなるな、君が帰るなんて……いつでも来てくれ。待っているよ」
「わん」
「ふふ、待ってるよ」

「え、ええ!?」
「済まない。貴方が迎えにくるまで預かっていたら、つい」
「別に気にしなくてもいいですわ。その、私の落ち度もありますし……」
「いえ、こちらこそ。もっと早く連絡できたら良かったのですが。
 ところで今日は、他に何かご用件は――」
「い、いえ……失礼します」

一瞬、八雲紫が何か動揺しているように見えた。
僕に気を使ってか、珍しく扉を使って去っていったからだろうか?
否。それは、僕の抱いた離別を惜しむ念による幻覚だろう。
柴は去る。それは最初から判っていたことだ。
だからこそ一緒にいた時間を大切にした。




さようなら。そしてありがとう。
八雲柴、君と一緒に過ごした日々は、手に入れがたいものだった。

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