未確認歩行物体
東方香霖堂などが好きなケダモノの住処
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

お守り様は蛙様で...07
外の暑さと対照的に、中はひんやりとして涼しさを感じる事ができた。
もちろん実際には暑いのだろうが、外の温度を考えれば天国に思えた。

「思っていた源泉とはかけ離れた所になったな……」
もっと源泉って言うのは、静かで、自由でなくちゃならない。
そういう思い込みでいたものだから、出鼻をくじかれた気持ちになってしまう。

「そんな事いわれても困るよー。ほら、こっちがお風呂。帰りは自分で頑張ってね」
「ああ、ご案内どうも」

どうして地獄のド真ん中にこんな設備があるのかも謎だが、壁に書かれた文字も更に謎だ。
外から流れ着く書物で見かけた記憶のある文字だったが、なんと読めばいいのか判らず
さすがに閉口してしまった記憶がある。おそらく異国の文字だとは思うのだが。
чорно?ильと書いてあっても、何が何だかわかったものではない。

「まぁ、入るか……」
脱衣所まである源泉というのだから、いよいよ脱力もきわまって来た。
服を脱いで湯船に向かうと、なるほど、確かに風呂っぽい風呂であった。
骨折り損とはこの事だといわんばかりに投げやりに体を洗い、湯船に身を沈める。
「ブクブクブク...」
鼻まで湯船に使って意味もなく息を吐き出してみる。
目の前を、どうやって入ってきたのか、蛙が泳いでいった。

「で、源泉に来た感想はどう?」
「……ここは男湯じゃないのか?」
「源泉に男女の区別なし。そもそも蛙に何を言うのさ」

背後から声がする。それも、聞き覚えのある女性の声が。
振り向こうと思ったが、状況が状況だけに危険な気がしてならない。
もちろん、色々な意味で。

「覗き見とは趣味が悪いね」
「神のご加護と言って欲しいなぁ」
「押し売りされるのは好きじゃないんだ。そんな大層なものなら、尚更さ」

振り返れば、そもそも乗せられたような気がしないでもないが
ここまで歩いてくれば、ちょっとした小旅行だ。
帰りのことを考えるとうんざりするが、店の良さを再認識できただけよしとしよう。

「つれないのね。あーあ、せっかくツアーでも組もうと思ったのに。
 出入り口も、もっと楽にした方が良さそうね。実は此処、貴方が思う以上に帰りは楽なのよ」

何だって、と言って振り返りそうになるが寸前で止まる。
つまるところ僕はていの良いダシに使われたというわけだ。

僕は後ろにいる蛙が茹で上がることを願わずには居られない。
もっとも、本当にそうなられては帰り道が聞けないので困るのだが。

「ふぃー。お先に失礼するね。帰るときには一声かけてよ」
「蛙にかい?」
「……今のは笑うところ?」
「?何を言って……ああ、そういう」

どうやら僕は疲れているらしく、ぐだぐだとした会話になっている気がする。
というか眼の前がくらくらしてきた。ひょっとして湯当たりしているのだろうか。
もしそうだとすれば、いよいよ面倒だ。

「さっさとあがって帰る。できれば早々に横になりたいが、戻るにも時間がかかりそうだね」
「いや、すぐに戻れるさ。妖怪の山にある神社までなら近いもんだよ」

しまった、と声のするほうを向くと蛙が面白そうに笑っている――ような、声を出して鳴いていた。

「お、何か期待したのかね?」
「……いや何も。さっさと帰りたい気持ちで一杯でしてね」
「まぁそういわずに。お詫びと言っちゃ何だけど、上で茶でも出すさ」

陽気な蛙の鳴き声を聞きながら、これではどっちが客だかわからないと思った。


[READ MORE...]
スポンサーサイト


プロフィール

ぽんこつたぬき

Author:ぽんこつたぬき
春が来たら冬眠から覚める獣。
リンク、転載は許可無しでも可。

小説っぽい何かが読みたい人は
東方タグを押すと楽です。

twitter -> ponkotsutanuki



最近の記事



最近のトラックバック



月別アーカイブ



カテゴリー



ありがたい来客者



ブログ内検索



RSSフィード



素晴らしいリンク先

このブログをリンクに追加する



ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる





上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。